2020年4月3日(金)
3月6日の例会は優良社員表彰を予定しておりましたが、新型コロナウイルス感染症の影響を受け4月3日に変更しましたが更に延期となりました。今後、優良社員表彰のあり方を検討してまいります。
さて、私たちロータリアンにとっても馴染みのあるボランティアですが、その歴史についてちょっと振り返ってみたいと思います。まず、ボランティアは江戸時代にもあったという話です。「火事と喧嘩は江戸の華」というように、人口が100万人を超え木造の住宅が密接して建っていた江戸の町では、2〜3年に一度の大火を含めて江戸時代だけで2,000件余りあったと言われるほど頻繁に火事が発生しました。「義理と人情とやせ我慢」が江戸っ子気質だといいますが、江戸の町で火事が発生するとこの3つが信条だといわれる江戸っ子としては、居てもたってもいられなかったようで、特に商いを営む町人たちは火事で焼き出された人たちを支援しようと現場に駆けつけて炊き出しをしたそうです。
ボランティアとは「無償奉仕」とも言い換えられますが、一般的に自発的に他人・社会に奉仕する人または活動を指し、百科事典には「無償で自発的に社会活動に参加したり、技術や知識を提供したりする人、またはその活動」と定義され、理念として「自分から行動すること」「ともに支え合い協力し合うこと」「見返りを求めないこと」「よりよい社会の実現を目指すこと」が挙げられています。こうした小難しい定義はさておき、江戸っ子たちが火事の現場に駆けつけ焼き出された人たちに炊き出しをしたということは、いわゆるボランティア活動であったかもしれません。となると、日本ではボランティアの歴史は少なくとも江戸時代には始まっていたと言えるかもしれません。ところが、それがいつしか商店同士で競い合うようになり、江戸っ子たちも「どこの商店が一番先に駆けつけたか」ということを話題にするようになったといいます。つまり、本来はボランティアだったのかもしれませんが、地域コミュニティーに速やかに寄り添って行動することが店の信用を高め、そしてビジネスの成功に繋がるということになっていったということで、目的が変質していったようです。
ボランティアという言葉は近年すっかりポピュラーになりましたが、この言葉がにわかにスポットを浴びて市民権を得るきっかけになったのは1995年(平成7年)、かの阪神淡路大震災でした。阪神淡路大震災では、全国から多くのボランティアが支援に駆けつけたことから、震災が発生した1月17日を「防災とボランティアの日」とし、この年が「ボランティア元年」ともいわれました。そして、ボランティア活動がさらに脚光を浴びる災害が2年後に起きました。1997年(平成9年)1月2日、ロシア船籍のタンカー「ナホトカ号」(13.157総トン)が島根県隠岐島沖の日本海で起こした重油流出事故です。「ナホトカ号」は沈没。およそ6,000キロリットルの重油が流れ出し、汚染は島根県から秋田県の海岸に及びました。このときに問題となったのは、沿岸部に重油が漂着すると養殖場が全滅するなど、非常に大きな被害が発生することでした。風の強い日が続き、重油処理剤やオイルフェンスを張ることが十分に行うことができず、結局取られた手段は岸に漂着した重油を人海戦術によって取り除くという方法でした。海上では海上保安庁や海上自衛隊が、重油が漂着した海岸では地元住民や全国各地から集まったボランティア、自衛隊などが回収作業に当たりました。2年前の阪神淡路大震災で、ボランティア活動ということが言われ出したこともあり、福井県の海岸に多くのボランティアの人たちが集まりました。油が漂着した場所は岩場であり、機械を用いた回収作業が困難な箇所でしたから、油の回収に唯一有効な手段は人力によって柄杓を用いて集める方法だけ。延べ28万人というボランティアや地元民の苦闘がテレビでも連日報道され、全国民の注目を集めました。そして、この災害でボランティアの考え方が大きく変わり、各地でいろいろな災害が起きたときにボランティアがスムーズに受け入れられる態勢ができていったのでした。
ボランティアは今、災害ボランティアや地域のお祭りやイベントのボランティアなど、いろいろ多様化しております。たとえば、1.「災害救援」災害時の救援活動や復興支援など、2.「環境保護」環境保全や清掃活動など、3.「社会福祉」障害者や高齢者などのサポート、4.「まちづくり」地域おこしや地域創生など、5.「スポーツ・文化・芸術」スポーツ教室・美術館・博物館での活動や地域文化などなど。一人暮らしの高齢者が増加する中で、そうした人の相手になる「傾聴ボランティア」といった聞き慣れないボランティアもあります。最近では「恩返しボランティア」というのも目立ってきています。東日本大震災で罹災した人が「困った時はお互い様」ということで、恩返しとして他の被災地でボランティア活動や支援活動に参加するようになり、熊本地震や西日本豪雨、また直近の台風などの復興に助力するといった動きが多くあります。一方、ボランティア活動はいろいろな課題も残しました。中には観光半分でやって来た人もおり、その反省からボランティアのあり方も大きく変わってきております。
ボランティア活動は自発的な行動であり「害を及ぼさない」という原則で、相手や現地にマイナスの影響を与える行動はとってはならないという姿勢が求められ、被災した人たちの負担にならないよう自らの行動と安全に責任を持つことが奉仕の最低限のマナーだとされています。
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