さあ、今度は皆さんの番です。皆さんは、地区の改善に向けてどのようなアイデアをお持ちでしょうか。計画をしっかりと立てることはもちろんですが、その前にまず夢を描いていただきたいのです。それも大きな夢を。地区内のクラブがより大きく、豊かで、大胆になるために、何ができるでしょうか。皆さんには、地区を新たな方向へと導き、新しい魔法をもたらすまたとない機会が待ち受けています。夢を描くことができれば、それは実現できます。1957-58年度RI会長、チャールズ・テンネント氏が述べた「ロータリーの魔法と本領、そして力の源は、人々の生活に根付いた思いやりあふれる奉仕である」という言葉は、まさに至言です。私たちは、ロータリーの魔法の力をさらに素晴らしいものにすることができます。それには、壮大な考えを持ち、行動を起こすことが重要です。
未来という不確かな領域に踏み込もうとするとき、決まって抵抗する人々が出てきます。「未来が抱える問題は、現在のすべてが変わってしまうことにある」とは、ある賢者の言葉です。ロータリーは、いくつもの段階的な変化を経て、現在の世界的な地位を築いてきました。ときには、勇気と先見の明をもった指導者の先導の下に、飛躍的な変化に踏み入ったこともありました。1970年代に承認された3-Hプログラムがこの例の一つで、後にポリオ・プラスが生まれるきっかけとなりました。この変化は、バミューダのジャック・デービス、オーストラリアのクレム・レヌーフ、米国のジェームス・ボーマーという3人のRI会長が年度ごとにバトンを渡し、受け継ぎ、実現させたものです。この経験から得られる学びは、非常にシンプルながら力強いものです。すなわち、皆さんが地区において末永く残る成果をもたらす改善を望むなら、その計画を実施する前に2人の後継者から支援を得る必要があるという教訓です。自身の計画を後継者と分かち合うことです。功績を分け与えるのが、良き指導者というものではないでしょうか。
自分の計画を説明する際には、変化を論じる代わりに、改善すべき点について話すのがよいでしょう。変化のみを目的とした変化からは、何も生まれません。しかし、ロータリーを常に活力に満ち、時代に即した組織に保っていくには、継続的な改善が非常に大切です。また、クラブが現在の親睦と奉仕のレベルを保っていくには、躍動的かつ行動的でなくてはなりません。修正されたRI長期計画も、それを前提としています。「変化は進歩を保証するものではないが、変化なしに進歩が起こりえないことは明らかである」とは、ヘンリー・コマジャーという歴史家の名言です。変化全般について語るより、それぞれの地区における進歩について語るほうが遥かに賢明です。
私は、来る年度が革新と実験の心意気を映し出すロータリー年度となることを、切に願っています。RI理事会は前進する準備ができています。夢を描き、実践する構えが出来ている皆さん、ぜひ一体となって前に進んでまいりましょう。私の提案するアイデアがすべて成功するかどうかはわかりませんが、やってみる価値はあると思います。新しいアイデアから成果が得られれば、私たちは進歩を遂げ、その成果は継続されていくでしょう。仮にそれが失敗に終わり、廃棄物の山の片隅に追いやられたとしても、その試みから学ぶことが必ずあるはずです。ロータリーの進化の大部分が試行錯誤から生み出されたことを踏まえ、皆さんも私とともに、クラブを支え、強化するために地区がもっと積極的に取り組めるような新しい方法を模索してくださるようお願いしたいと思います。ロータリーの魔法の力を借りて力を合わせるなら、ロータリーに違いをもたらし、世界をよりよい場所にすることができるでしょう。
財団の未来の夢計画の立案にかかわった委員は、全員がジェームズ・コリンズの書いた「ビジョナリー・カンパニー2」という本を読みました。この書の非営利団体のための付録の中で、コリンズは長期計画を立てる際に用いるべき3つの問いかけを紹介しています。未来の夢計画を立てるにあたって、私たちはこの問いを指針としました。その問いとは、「団体のリソースをつき動かすものは何か」「会員が情熱を抱いているものは何か」「あなたの団体が世界一と誇れるものは何か」というものです。
財団の資金が任意の寄付から成り立っていることは周知のとおりですが、成果の出ているプログラムにはより多くの寄付が集まってきます。一方、RIの資金は会費から成り立っています。ですから、RIプログラム、特に青少年プログラムへの支援を増やしたり、クラブがより大きく、豊かで、大胆になれるよう支えるために地区の資金を増やしたりするには、ロータリーの会員の増加が必要なのです。会員基盤が成長すれば、躍動的な組織としての望ましい循環がもたらされますが、減少すればこれとは反対に下降の一途をたどることになります。
次に、ロータリアンはどんなことに情熱を抱いているのでしょうか。私は、親睦と奉仕であると思います。楽しみ、友情、親睦はロータリーの礎石のようなもので、私たちはこれに情熱を感じます。これがなければ、ロータリーがここまで成果を挙げることはなかったでしょう。奉仕に関しては、ロータリアンによって、青少年交換やポリオ撲滅、識字など、情熱を傾ける対象はそれぞれです。専念するプログラムは違っても、ロータリアンであるなら、世界をよりよい場所にするためのロータリーの精神とロータリーのプログラムに対する情熱は同じです。世界各地でロータリー・クラブの運営の仕方はさまざまですが、すべてのクラブは親睦と奉仕という目的を共有しています。つまり私たちは、クラブのネットワークを通じて「画一化ならぬ結束」を見事に実現しているのです。そして、より大きく、豊かで、大胆になれるようクラブを援助できるなら、ロータリーにさらなる全盛期が確実に訪れるはずです。
それでは最後の重要な問いに移ります。私たちが世界一と誇れるものは何でしょうか。それは、幅広いプログラムを通じて国際理解、親善、平和を推進するために、200余りの国と地域に存在する33,000のロータリー・クラブのネットワークを活用することに尽きます。ポリオ・プラスのおかげで、今日私たちは世界の表舞台に立ち、世界有数の奉仕クラブ団体に数えられるまでとなりました。しかし、ロータリーをシンプルにという自分自身の忠告を顧み、私たちが世界一と誇れるものを最も簡潔に表現するなら、「地域を育み、大陸をつなぐ」というシンプルな言葉に集約されるのです。